無為庵

読書メモ、アイデアの蔵。

【完】 「Ghost of Tsushima」 改めてレビュー

ウィッチャー×アサシンクリードを中世日本っぽい地で 

一昨日発売された「Ghost of Tsushima」。色々寄り道をしまくった挙句、「守之段」をようやくクリアした現在、改めて感想を書いておきたい。

 

(更新:2020年7月23日)

(最終更新:2020年7月24日――ストーリークリア)

*難易度「難しい」でクリア。

 

総括:理不尽な戦闘を楽しもう

鎌倉時代の日本を楽しむゲーム」としては遊べない

まず、私にとっては期待値を大幅に下回るゲームとなってしまった。

というのは、"鎌倉時代の日本を舞台にしたゲーム"という点に期待を寄せていたからだ。その実は"外国人のイメージでつくられた適当な日本を舞台にしたゲーム"だった。

 

発売前のPVの段階で色々怪しい部分はあったが、「所詮ゲームだからなぁ」ぐらいに思ってはいた。

しかし、蓋を開けてみれば予想を遥かに超えるテキトーさだったのである。元々の期待値の高さも相まって怒りすら湧いてくる。

 

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主人公・境井仁 胴丸?に打刀・脇差の二本差しスタイル(カオス)

 

ゲームシステムはウィッチャー×アサシンクリード

肝心のゲームの方はどうか。

端的に言えば、ウィッチャーとアサシンクリードを合体させたような感じ

 

NPCから依頼を受けたり情報を貰ったりして、いわばクエストをこなしていく。その際、痕跡を辿ったり死骸や残骸を調べたりするところは、ウィッチャー3を彷彿とさせる。

戦闘も、ダークソウルや仁王のような三人称視点ではなく、主人公を中心にその周りを映すタイプ。

 

他方、崖や障害物、建物に登ったり、暗殺アクションがあったりと、アサシンクリード的な一面もある。敵AIの性能(の悪さ)も同程度だ。

 

面白い点

  • 元軍相手に暴れまわって拠点を解放する楽しさ
  • スワイプして風を起こす

 

残念な点

キャラクターが違和感満載

時代考証も然ることながら、登場するキャラクターも違和感満載である。

言うなれば、「日本人の皮を被った外国人の劇」って感じ。

 

まず、人間関係が外国人のそれである。特に、叔父上と主人公の関係に、日本的な上下関係を感じない。外国の映画に見られるような距離感で描かれていて、気持ち悪い。

また、商人や百姓が、時代劇ばりに武士(主人公)にひれ伏す場面があるかと思えば、突然助けてやった商人から「役ただず」と罵倒されるなど、描写に一貫性がない。ちなみに、大名行列に民衆がひれ伏すのは時代劇の創作である。

巫女が座禅を組んだり、僧侶が神への祈祷について説いたり、現代風の墓地の入口に鳥居があったりと、神道や仏教の明らかな混同も見られる。

 

他方、言葉遣いや名前もしっくりこない。日本語らしい自然な表現が圧倒的に不足している。例えば、何故か主人公は佩刀のことを「太刀」と一貫して呼び続けるのだが、当時の人にとって「刀」と言えば「太刀」のはずだから、「刀」と呼ぶ方が自然ではないだろうか。また、主人公やNPCは歌のことを「和歌」と呼ぶが、「和」は「日本」の意味なのだから、これも違和感がある。だって、昔の日本が舞台なのだから、基本的に歌と言えば和歌を指すはずだからである。

それから、主人公「仁」や父親の「正」など、人名も現代人風なのが目立つ。諱を平気で口にする。

 

"ブシドー"なやりとりが茶番

今作の主人公は、"正々堂々戦わず、闇討も辞さない存在に身を落とした武士"という設定。裏を返せば、"武士は正々堂々戦うもの"という常識がゲーム内に通底していて、しょっちゅう"武士道"を説くシーンが見られる。

 

だが・・・残念ながら所謂"武士道"は江戸期以降、武士が戦士としてではなく為政者としての在り方を求められるようになってから、明確に登場してきたもの。

戦国時代までの武士が生きていたのは、自分の身・家・領地その他一切は自分の手で守れ、"敗北=死"だ、という弱肉強食の世界である。

暗殺・謀略等は至極当然、負けた者が不覚悟であっただけのこと。故に、「冥人」の戦い方は決して卑怯ではない。虚を突くのは戦いの基本だと思う。

 

確かに元寇は、武士が名乗りを上げ終わる間もなく包み殺しにしたという話で知られる。しかし、武士が律儀に名乗りを上げて自らの正当性を主張し、郎党が見守る中で一騎討ちを行うなどというのは、武士の登場から間もない頃の話だ。所謂源平合戦のときには、一騎討ちばかりでなく集団戦が行われていたと見るのが妥当だろう。そうでもなければ、義経の"鵯越の逆落とし"のような奇襲は成立し得ないはずだ(名乗りを上げて一騎討ちをしていたのでは、奇襲とは言えないからである)。

要するに、武士道の成立背景のみならず、単純な戦闘様式の変化を見ても、叔父上や初期の主人公が"武士道"に執着するのはおかしなものと言わざるをえないと思う。

 

だから、しきりに"武士道"を説く "Ghost of Tsushima"は違和感しかない。

しかも、それは"武士道"ではなく、新渡戸稲造の『武士道』を読んだ(のかも疑わしい)外国人による"ブシドー"。それを、日本人の顔した、変な日本語を話す"ブシ"が、事あるごとに語るから、特に序盤は聞くに堪えない。

 

そんな彼らにはこんな言葉を贈りたい。

武者は犬とも云へ、畜生とも云へ、勝つ事が本にて候  『朝倉宗滴話記』

これが偽らざる乱世の武士の習いである。何が何でも勝たねばならん。だって、負けは死を意味するのだから。

 

でも、ムービー飛ばせないんだよなあ。

 

戦闘も問題あり

肝心の戦闘も慣れるまではやりづらい点がある。

なんと言ってもカメラワークが酷い。特定の敵にロックオンするシステムがない時点で困惑したのだが、更にカメラが障害物を避けたり透き通ったりしない上、映る範囲が狭過ぎる。で、折角敵の攻撃を受け流しても、その敵が視界の外に出てどっか行く。逆に視界外から攻撃が飛んでくることもしばしば。但し、これは戦う場所を選べばどうにかなる。でも、建物や塀といった障害物が多い場所が戦場になることが多いのも事実だ。

 

また、相手の攻撃のホーミングが異常。何と言うか、「敵の攻撃がこちらに吸い付いてくる」。

普通、(近接・遠距離問わず)攻撃には言わば「射程」がある。これはどのゲームでも同じだろう。そしてそれは、今の自分の立ち位置から一定の距離である。

主人公に関してはこれが厳しく設定されているらしい。例えば、二歩先までしか進まない攻撃があれば、三歩先の敵には届かず、空を切ることになる。ゲラルトなんかは、大股で移動したり前転したりして自動的に距離を詰めてくれたものだが…

それに対して敵はというと、射程が長く設定されていることが多い。特に広いのは槍兵の突きで、5mくらい離れていても被弾する(槍は2mくらい)。場合によっては、全力疾走で逃げていても一気に距離を詰められてしまう。おまけに、とあるスキルを習得するまで槍兵の攻撃は受け流せない。

どうも、敵の攻撃の一部は「今の立ち位置から○m以内なら中る」ではなく「発動すれば相手(つまり主人公)に中る」という設定になっているように見える。つまり、ある程度近づかないと攻撃してこないけど、一旦発動すれば受け流すか避けるかしない限り中るよう、移動距離が調整されるのである。

一騎討ちならまだ良いが、1対多の乱戦になりやすい今作ではかなりの脅威だ。因みに、怯み時等の無敵時間はない模様

 

意味の無いオートセーブ

本作は事あるごとにオートセーブされるが、遡れるのは直前のチェックポイントだけである。そのため、ボス敵との強制一騎討ちなどで詰んだ際、チェックポイントがその一騎討ちの始めに上書きされるので、別のセーブデータをロードするか、ボスを倒すかしない限り、延々とボス戦をやらされる羽目になる。おまけにチェックポイントからやり直すと、「気力」(回復や特定の技を使用するためのポイント)の状態は復元されず、一律で0にされるという謎仕様である。原状回復しないセーブって、セーブじゃなくね?(一時的な不具合の可能性あり。基本は原状回復されるが、時々されないことがある。)

今作は「突然ボス戦」ということが多々ある。そうときにこそオートセーブは役に立つはずなのに、 今作は全く意味をなしていない。

 

緊張感のないボス戦

今作では、ボス敵との一騎討ちが随所で行われる。これは、ザコ敵の介入は一切なく、逃げ道もない状態での1対1の戦いである。

この一騎討ち、始まりには必ず、敵と主人公が向かい合い、敵が武器に手をかけ、主人公が鯉口を切るという長いムービーが入る。で、雰囲気を出すのだが…

肝心の戦闘は緊張感に欠け、大抵はストレスがたまる。というのは、敵が異様に堅い上、攻撃力も無駄に高く、ただの死にゲーになるからだ。こちらは数発の被弾で死にかけるが、敵を倒すには何十回も斬らねばならない。おまけに、

  • 暗具(苦無など)や弓は使用不可。つまり、「冥人」としての戦いは封じられる
  • 大技の予備動作中の敵は無敵であることが多い。
  • シールドバッシュなどならまだしも、ただの斬撃なのにガード不可の技が多々存在する。
  • 逃げ場がないのに、事実上のオールレンジ攻撃が多い。つまり、上記の"異様な移動距離補正"である。
  • ダークソウルや隻狼とは異なって、倒れてから相手に止めを刺される描写があるため無駄な時間を食うし、使えないオートセーブのせいで体勢を立て直すこともできない

…などなど、互いに一撃が致命傷になるような緊張感のある戦いとは程遠く、ただ厳しい。これなら、侍道の「一撃死」の方が面白い。

 

追記(2020.7.23):ストーリーは後半から面白くなる(ネタバレあり)

前半はストーリーややり取りの茶番さ、慣れない「仕様」などのせいで、"ただ蒙古を殺すだけのゲーム"だった。しかし、後半(破之段の終わり)からは、"守破離"の通り、主人公が武士としての在り方を捨て、叔父上とも決別することになる("正々堂々とした在り方を捨て、闇に墜ちる"というのは、メタルギアライジングを思い出させるが、アメリカではそういうのが好かれるのだろうか)。

ここに来てようやく、この先どうなるのか少し期待できるようになった。

 

結論:「Ghost of Tsushima」はハードルを上げすぎた

「Ghost of Tsushima」は何が悪かったのか。

それは、"リアル路線"を前面に押し出しすぎたことにあると思う。

まず、PVでリアル路線のゲームであることを印象づけた。裏を返せば、この時点で「相当緻密に描かれているんだろうな」という期待値が高まってしまった。

しかし、実際はその期待値をちっとも満たせなかった。

出鱈目な時代考証、日本文化に対する明らかな誤解、違和感のあるキャラクター、茶番としか言いようのない"ブシドー"物語、全体的にもっさりとしたアクション、見るからにおかしな動きをする敵、突然崩壊するゲームバランス、飛ばせないムービー……

それらはプレイヤーを失望させるに十分だったのである。冥人が叔父上を、失望させたように。