無為庵

読書メモ、アイデアの蔵。

読書メモ:児玉光雄(2017)『逆境を突破する技術』2

 

第6章 やる気を高める技術

思い立ったら期限を決めよ

モチベーションには種類がある。その中から自分に合ったものを選ぶが吉。

特に、「希望系モチベーション」(夢や目標を目指すことで湧くモチベーション)と「緊張系モチベーション」(期限や緊張感に駆り立てられることで湧くモチベーション)とのハイブリッドが、最も効果的であると言われる。つまり、何かを志したら、「いつまでに何を成し遂げる」という期限を設定すると良い

 

人間の脳の癖① やりたくないことは金を積まれてもモチベーションが上がらない

人間は、やりたくないと思ったことは報酬を出されてもやる気になれない。だから、やる気のでない仕事には、自分なりにノルマを課すと良いかもしれない。

 

人間の脳の癖② イメージを司る右脳は「~してはならない」という指示を理解できない

「考えないようにしよう」と思えば思うほど考えてしまう。「なんかこういう失敗しそうだな」という謎の未来視に囚われると本当に現実になってしまう。

そういった経験の原因がこれだと私は思う。

――右脳は否定の命令を理解できない。

 

これが分かれば、対処のしようもあるというもの。

私は"他のことを考える"のが一番かなと思うけど、『逆境を突破する技術』では他にも"敢えて不安と格闘する"、"不安とその解決策を日記に記す"といった方法も有効としている。

 

その他
  • 逆境を乗り越えるのは、その場でできる限りのことを積み重ねた者である。
  • 行動した後悔より、行動しなかった後悔の方が心理的ダメージが大きい。

 

 

第8章 回復を忘れるな

*第7章は他と重複する内容が多いので割愛。

仕事は体力と同時に気力を削る。だから、毎日オフタイム(趣味=回復の時間)を設けることが大切である。

  • 回復で特に有効なのは、「何かに熱中すること」。
  • 適度な運動や睡眠は回復の代表格。
  • 自然の風景を眺めたり、リラックスできる音楽を聴いたり、笑ったりするのも効果的である。
  • 瞑想は心を落ち着かせてレジリエンスを強化するだけでなく、閃く力も回復する。

 

 

まとめ

『逆境を突破する技術』は、逆境を上手く切り抜ける手段として様々な心理学的な理論を紹介する一冊だった。紹介される理論・学説が多岐に亘るが、その系統というか、基本的な法則のようなものがいくつかあるように思えた。

 

①上善は水の如し 

水は、流れる地形や収まっている器の形に従って、いかようにも形を変える。物事に取り組む姿勢もまた、そうあるべきようだ。

つまり、「こうでなくては駄目だ」と凝り固まるのではなくて、その時々に応じて軌道修正をする柔軟さや心の余裕を保つことが、第一の鉄則と言える。

大体、レジリエンスは「逆境への精神的な適応力」ではないか。

 

初めに決めた計画に拘って、その通りにいかないと焦ってしまう完璧主義から離れ、「今」に全力を挙げ、失敗は軌道修正と次なる飛躍の機会と捉える最善主義をとろう

 

ちなみに「上善は水の如し」は、無為自然を説く『老子』の一節である。

 

②事象と感情の分離

例えば、我々は道端で1000円札を拾ったら「嬉しい」と思う。

しかし、冷静に考えれば、現実には「1000円札が道に落ちていた」「自分がそれを拾った」という事実が横たわっているだけであって、「それは嬉しい出来事だった」と"意味づけ(解釈)"したのは自分である。もし"自分"が機械であったならば、「1000円札を視認」「1000円札を拾得」「以上」で済んだはずだ。

つまり、物事を解釈したり評価したりするのは"自分"である。そして、その解釈や評価の仕方によって自分の心は揺れる。勇気づけられることもあれば、打ちひしがれることもある。

であれば、前向きに解釈したり評価したりすることで、自分の心や意志を守ることができる。これはまさしく、レジリエンスを高める技術に他ならない。

 

出来事と感情は不可分ではない。

これを理解しておくだけで、打たれ強くなる。

『逆境を突破する技術』に「出来事と感情の乖離」なんて項目はないけれど、要はそういうことなのだろうと思う。

 

③逃げるな 戦え

当たり前のことなのだけれど、実際にやるとなると難しいこと。

大事を成すのは、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」ることのできる人。しかし、遥か昔から努力を重ねても報われるかどうかは分からない。

大抵の人間はそこで終わる。

しかし、何か人生に意味を与えたいのならば、ただ少しずつ前に進むしかない。

レジリエンスはその為の技術である。報われるのが何歩先か分からない――いや、報われるかさえ分からない、悠久の歩みを止めないための術である。

 

④日常的に使える心理テクニック

  • 思い立ったら期限を決める。【モチベーションを維持して行動につなげるコツ】
  • 嫌な思いは「反芻」で大きくなる。負の思考が堂々巡りしていると思ったら、別のことを考えるか、無心になるよう試みる。【負の思考にやられないコツ】
  • 良くないイメージが湧いたときも別のことを考える。それを振り払おうとして余計イメージが脳裏にこびりつくと、本当にそれが現実になる。【緊張の中、失敗するイメージが湧いてきたときの対処法】

 

追記:人は輝く人を見たくない

実は、『逆境を突破する技術』を読んでいた途中、嫌悪感を覚えることがあった。

"上手くいかなかった原因を自分に求めない"ことに、である。それは、"自分のせいにしない"というのが無責任な態度だと思ったからではない。ここでいう"自分に求めない"のは、徒に自分を否定して意気消沈しないことであって、反省すべきは改めるのが前提だから、責任転嫁とは全然意味が異なるのである。

 

では、どこに嫌悪感を感じたかと言えば、「いつでも前を向いて諦めない」姿勢なのだろうと思う。

屹度、諦めない人は眩しいのだ。どんな不幸に見舞われ、努力が否定されようと、血や泥に塗れたその身に反して、その歩みは止まらない。何よりも険しいが、何よりも美しい業。人間はそこに価値を見出すからこそ、数多の虚構はそれを描くのだろう。

そして、誰もがそれを夢見て――しかし己の限界を突きつけられ、挫けていくからこそ、輝く者を見たくないのだ。

それで、「天才」やら「才能」やらという言葉を作り出す(実際、そういったものは確かに存在していると言わざるをえないのも、下手に説得力を増すから質が悪い)。あるいは、自分の出自や境遇、過去を盾にしたり、他人の努力を嗤ったりする。

要するに、私が感じた嫌悪感というのは、そういった嫉妬心だ。もう気力は枯渇しているが、しかし負けを受け容れることもできていない。心を満たしたいが、もう努力したくない。そうした幼稚で傲慢な思いは、ただの醜態か、反撃の可能性か。

いずれにせよ、その嫉妬心に克ち、歩み始めるところにしか成功は舞いこまないのは確かであろう。諦めるか、まだやるか。選択を迫られそうだ。