無為庵

読書メモ、アイデアの蔵。

19世紀のロシア——南下政策、本格始動

 

 

*18世紀までのロシアについては↓

muian2020.hatenablog.com

 

アレクサンドル1世の時、モスクワ遠征(1812)でフランスを潰走させたロシアは、ナポレオン戦争を終わらせた功績でウィーン会議の主役の座を得る。ロシアはその立場を利用し、不凍港を目指す南下政策を活発化させた。

19世紀のロシアの歴史は、不凍港を巡る挑戦と挫折の物語である。

 

 

打倒オスマン帝国――東方問題

ロシアにとって不凍港は悲願だった。極寒の地であるロシアの港は冬場になると凍ってしまい、出撃も貿易もできなくなるからである。

そこで目をつけたのが、最短距離で海に出られる"南方の黒海を経由して地中海に出るルート"である。

ただ、そのためにはオスマン帝国を退け、ボスフォラス海峡ダータネルス海峡とを制圧する必要があった。

f:id:M-harakiri:20201004172016p:plain

二つの海峡


そこでロシアは、バルカン半島オスマン帝国支配下にある諸民族を懐柔し、帝国を切り崩すことで海峡を手に入れようと目論んだ。その過程で生じた諸々の問題を、西欧諸国から見て「東方問題」と呼ぶ。

 

クリミア戦争(1853~56)

さて、ロシアはオスマン帝国の紛争に介入し、どうにか自分たちに有利な状況を作り出そうと試みるが・・・なかなか上手くいかない。

結局、ニコライ1世(位1825~1855)が、帝国内のギリシア正教徒保護を名目に同盟を申し込むがオスマン帝国がこれを拒絶したことを口実として、開戦に踏み切った(クリミア戦争:1853~56)。

この戦争では、ヴィクトリア女王のイギリスナポレオン3世のフランスとが、ロシアの南下による影響力の拡大を危惧し、オスマン帝国に助太刀した。また、サルデーニャ王国がフランスと友好関係を築くべく加勢したので、実質的にはロシアvs英仏・サルデーニャ王国という構図になった。

戦争はロシアの敗北に終わり、講和条約(パリ条約)によって黒海に海軍を配置することもできなくなってしまう。他方、フランスではナポレオン3世の求心力の増大、イタリア半島ではサルデーニャ王国による統一戦争へと繋がった。

 

「上からの近代化」を目指す

さて、戦後のロシアではニコライ1世が亡くなったことで、アレクサンドル2世(位1855~1881)が即位する。彼は、クリミア戦争の敗因は産業革命が不十分であったことにあると考えた産業革命を果たした英仏と未完のロシアとでは、軍備に大きな差があったのである。

そこで、アレクサンドル2世は手始めに農奴解放令(1861)を発令する。農奴とは領主によって農地に拘束され、耕作に従事させられる農民のことで、それを解放して自主的に農業を営む自営農民に変え、産業革命の前提となる生産力を確保することが目的だった。

ところが、農奴解放令は文字通り農奴を解放しただけだったため、農民は自腹で農地を買う必要があった。従って、それすらままならない大半の貧農は農村共同体(ミール)から農地を借りる小作人に留まった。

ただ、それでも都市部への人口流入が見られ、ロシアの資本主義発展のはじまりとなった。

 

ロシア=トルコ戦争(1877~78)

その後、徴兵制を導入して軍事力を高めたロシアは、ロシア=トルコ戦争(1877~78)で再度オスマン帝国を攻撃した。

その結果、ロシアが勝利を収め、ルーマニアセルビアなど、黒海西岸に親ロシア派国家を成立させ、その国々の港を利用することで間接的に不凍港を入手することに成功した

 

しかし、これは西欧諸国の反発を招いた。

ロシアが不凍港を得たことでヨーロッパの秩序が崩壊することを危惧したドイツ首相のビスマルクが、英仏伊墺などの同意を得てベルリン会議(1878)を開催し、講和条約の修正を強いたのである。結局、ロシアは間接的に不凍港を利用することができなくなり、またも南下政策は失敗に終わった

 

ロシアの東方進出

強引な南下政策はヨーロッパ社会から大きな反発を受けることを思い知ったロシアは、方針を転換して東アジア方面に不凍港を求めた。その結果が、中国における利権を巡る日本との衝突――日露戦争だったのである。

更に、東アジアでも不凍港の確保に失敗したため、再び欧州での南進を試みた結果、今度は第一次世界大戦を引き起こすこととなる。

ロシアの南下政策――不凍港確保の野望は、かくして様々な戦争を巻き起こすのである。

 

~参考~

山崎圭一(2018)『一度読んだら忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ

東京法令出版 教育事業推進部(2019)『歴史風景館 世界史のミュージアム』 東京法令出版

・世界史の窓 https://www.y-history.net/appendix/wh0601-113.html

       https://www.y-history.net/appendix/wh1202-009.html

  

 

muian2020.hatenablog.com